天然記念物の世界

「天然の美」という曲はちんどん屋さんのスタンダードですね。「天然」はnatureの訳なのでしょうが、 今はむしろ「自然」という言葉の方が普通なので、「天然」は死語に近い。 最近のテレビでは「天然ぼけ」というニュアンスで使われているみたいですね。 そのように、天然記念物という言葉は古めかしいニュアンスが漂います。

天然記念物には動物、植物などの生き物の他にも、地域や岩石、鉱物、化石などもあります。

天然記念物にも階級があって、特別天然記念物、国指定天然記念物の下に、 県指定や市町村指定の天然記念物もあります。そこまで来ると殆ど地元でも忘れられているものも 多いでしょう。

植物の場合、「群落」「種」「個体」と3タイプあります。 前2者は学術的に貴重なのでしょうが、「個体」は名木、巨木の類です。 それは渇れたらもう終わりでしょうが、殆ど渇れかかっていてもまだ天然記念物として残っています。

動物はさすがに、「個体」というのはないでしょう。絶滅寸前で1個体しかいないというのも ありますが、もともとは種が指定対象だったわけです。 しかし、長崎県野母崎町の巨大ウナギ みたいに、代々その井戸の中に住んでいる1匹のうなぎが天然記念物 というのもあります。それが死んだらよそから持って来るらしい。 この場合、この井戸の中に居るうなぎが指定対象なのだな。 (関連リンク)

岩石、鉱物の類はへんなのがいっぱいです。海岸全部とか崖とか壮大なのもあるし、 溶岩で木が燃え尽きた後に出来た穴とか、訳がわからんものまで。

私が好きなのは「天狗の麦飯」という訳のわからないもの。昔から食べられる土と 言われていたという土の小さな塊みたいなの。 長野県小諸市にあるらしい。 高速道路が小諸まで開通した事だし、見に行ってみるのもいいでしょう。きっとがっかりすることと思います。 (関連リンク)

遺跡なんかもそうだけど、いったら何も無いと言う事は多い。特に生き物は季節によるし、 捜さないと見つからない場合も多い。

唯一の自然物でない天然記念物が、静岡県にあるらしい。 それは、大地震の際に大砲の側面に台座が傷を付けて出来たと言う自然の地震計の記録 というものである。 偶然できたものだろうけど、妙なものを天然記念物にするものだ。 型破りな指定をしてしまうほどなので、よほど素晴らしいものに違いない。ぜひ見て見たいものだ。

(参考)「日本の天然記念物」(講談社)