千葉県成東町にある「食虫植物群落地」は、かつて「肉食植物発生地」というおどろおどろしい名称だった。 今は、肉食植物という名称はオーバーな為かあまり使われず、 食虫植物と呼ばれる事が多い。しかし、熱帯地方には虫に飽き足らず、鳥やねずみも食べてしまうのも いるという伝説がある。実際、雨蛙ぐらいだったら食っちゃう肉食植物はあるだろう。 小学生の時、偶然この看板を見つけて、いろいろと妄想を描いたが、実際にここにあるのは, きわめてかわいい植物たちである。 ここを訪れる多くの人も、変な先入観を持っている為に食虫植物を発見できないまま帰っている。
それにしても、食虫植物を見ると、やはり進化の不思議を考えてしまう。 なぜゆえ、こいつらだけ、植物としては掟破りの特異な栄養摂取の仕方をいきなり取るようになったのだろう。 その戦略が生き残りに有利なら、もっと繁栄してもよさそうが、そうでもない。 どちらかというと、養分の少ない湿地にひっそりと生きている。
また、虫を食う習性のある(高等)植物は, 2つの科しかないのだが、虫を捉えるテクニックは とり餅式だの、わな式だの、落とし穴式だの多岐に渡る。それぞれ独特で巧妙なテクニックを進化させている。 他の植物はそんなことに全然興味をもたないのに。 虫を食って栄養をとると言う原理だけは科に共通して固守しているのに関わらず、その手続は種によって ばらばらなのだ。
ここにあるのは、とりもち式では、モウセンゴケ, コモウセンゴケ、イシモチソウ、ナガバノイシモチソウが あり、蟻や蝦や蝿や蜘蛛や、せいぜい蝶やとんぼぐらいを食う。 わな式にはいろいろなミミカキグサやタヌキモがあるが、せいぜい大きくてもミジンコぐらいの プランクトンを食う。しかし、とりもち式は肉眼では分らないほどのゆっくりした運動しかしないのに 対し、罠式は動物並の俊敏さを持つ。
イシモチソウ(モウセンゴケ科)
カスミソウの様な白い花を咲かせている。虫を食うのはべとべとの葉である。
コモウセンゴケ(モウセンゴケ科)
地面にへばりついて蟻ん子を食う。こいつが、密集する様は赤い毛氈の様なので、 (小)毛氈苔と言う。でも、苔の仲間じゃなく、被子植物である。 写真の右はじに小さいイシモチソウも写っている。